『言いたいことも言えないこんな世の中は〜POISON〜』な日々

平凡な29歳女子に日々起こる、ちょっとした出来事に対して言わせてほしい

母と娘の間には〜犬も食わない親子喧嘩の話〜

 

友達のような親子…

 

そんな関係を望んだ時期もあったが、

うちの母とは絶対的に無理だ。

 

仲が悪いわけではない、

性格も真逆、価値観も違うがゆえに、喧嘩が絶えないだけだ。

 

 

私は、のんびりしていて、ぐうたらしているタイプである一方、

母は、てきぱき動き、何でも早く行動しなければ気が済まないタイプだ。

 

 

待ち合わせの時間があるとする、

私は時間ぴったり、もしくは少し遅れて到着するが、

母は2時間前ぐらいに到着してしまう。

心配性?せっかち?と言うべきなのかもしれない。

 

こんな真逆な母娘だが、2人には共通点がある。

 

お互い頑固なのだ。

 

そうなると、

待ち合わせ時間の2時間も前に到着したい母に娘は、

「まだ寝させてよ」と苛立ち、

ぐうたら寝続けている娘に母は、「早くしなさいよ」と苛立つ。

そうやって、お互い譲る訳でもなく、苛立ち、毎度喧嘩になるのだ。

 

 

そんな母との親子喧嘩は、毎回激しさを極める 。 

 

そしてこの喧嘩もピークに至った時期があった。

 

それは、

年々生意気になっていく娘

     vs

更年期を迎えようとする母 

 

各々がそれぞれの頂点を迎え、

この組み合わせが合わさった時である。

最悪な化学反応が起こる。いや、起こった。

 

(話しは違うが、「最悪な組み合わせ」と聞いて毎回思い出すのは、

赤ワインと塩辛の組み合わせだ。

赤ワインと塩辛を一緒に食べると、ゲ○みたいな味がする。

勇気ある方はやっていただきたい。)

 

 

 

そんな日に日に母と娘の喧嘩が激化する中、

ある夜、私たち親子史上最悪な親子喧嘩が起こった。

(かわいいモノではないかと思う方もいると思うが、

私たち親子にとって…なので暖かい目で読んで頂きたい)

 

 

本当に些細なことがきっかけだった。

 

なかなか風呂に入らずテレビを見続ける私に対して、

母がイライラを募らせていた。

 

「早く入りなさい」

「今入る」

 

「入ってからテレビみなさい」

「わかったって」

 

そんな問答がしばらく続き、

イライラがマックスに至った母が、

 

「いい加減にしなさい!!!!」と怒鳴った。

 

私は、「うるさっ」

などと目も合わさず気怠そうに呟いた。

 

母は、その態度に更に苛立ち、

私の日頃の数々のだらしない生活を持ち出し、叱り出した。

 

最初の頃は、聞かぬふりをしていた私だったが、

言われっぱなしの状態にイライラが募り、ついに爆発した。

 

今では覚えていないが、

母を逆撫でするような言葉を母に浴びせたのだろう。

母も、更にヒートアップし応戦してきた。

 

もう始まったら止まらない。

怒鳴り合いの大喧嘩が始まった。

 

一緒にリビングにいた父はと言うと、

最初は、まあまあと間に入ろうとしていたが、

すぐに諦め、そそくさと自分の部屋に逃げ込んでしまった。

 

 

しばらく言い合いが続き、 

母は高まりきった怒りを表現できる言葉が思いつかなかったのであろう。

 

「うぜえんだよ!!!!」

と涙目になって怒鳴った。

 

母は息を切らして、

そこにあった、わたしの洗濯したてのパンツとブラジャーを取ると

玄関のほうにズンズンと歩いていき、

 

玄関のドアを開け、娘のパンツとブラジャーを外に力一杯投げ捨てた。

 

私はとっさに、

「なにすんだよ!!!!」

と怒鳴り、外に自分のパンツとブラジャーを取りに裸足で外に出た。

 

 

一旦冷静になってみる。

48歳母の「うぜえんだよ」発言から、突っ込みたすぎる。

そして、夜とはいえ、娘の下着を外に投げるとは、普通にやばいし

裸足で公道に駆け出る娘も尋常ではない。

 

しかし、お互い正常な判断などできないくらい

怒り狂っているのだ。

 

そして、

外に散らかった、パンツとブラジャーをかき集めている時、

 背後で「ガチャ」と音が聞こえた。

 

母が、玄関の鍵をかけてしまったのだ。

 

時刻は夜11時、

パンツとブラジャーを握りしめ、裸足で締め出される娘。

 

普通なら、

母に謝罪し、家の鍵を開けてもらうようお願いすれば良いのだ。

 

しかし普通ではないから困った。

 

近所迷惑も考えず、締め出されたことに怒った私は、

大声で「開けろよ!!!!!」と

扉をドンドン叩いて訴えた。

 

母はその無神経な娘の態度に

「近所迷惑でしょ!!!」と扉の向こうから怒鳴った。

 

パンツとブラジャーを外に投げて、裸足の娘を締め出す母に

それは言われたくない。

それにその時の私は、近所迷惑など知ったこっちゃない。

怯まず、開けろ!と訴え続ける。

 

そして、

母は、いい加減にしなさい!と鍵を開け、

一言も言わず自分の部屋に入っていった。

 

 

勝ったんだ…

 

私は勝った余韻に浸り、風呂も入らずぐうたらと夜を明かした。

 

これが私たち親子史上最大の喧嘩だったのだが、

当然それから1週間ほどは口も聞いてもらえなかったし、

お弁当はもちろんのこと、ご飯も作ってもらえず、

洗濯も私の分だけしてもらえず、

直ぐに後悔した。

 

それだけ、母に生活を頼っていたのだ。

 

意を決しての謝罪もスルー。

 

 

ダサすぎる結末。

何が勝者だ、完全に敗者だった。

 

 

とまあ、しばらくして必死の謝罪も受け入れられ、

通常の生活を取り戻していった訳なのだが、

 

別々に暮らしている今でも、

価値観の違いからの言い合いは度々起こる。

 

 

しかし、母は母なりに娘の幸せを祈っての訴えなのだろうと

今では考えられるようになったし、

母の偉大さや家族への愛情深さをとても尊敬している。

 

また、

いつまでこんな言い合いができるかも分からないので、

ちゃんと親孝行もしていきたいと思う日々である。

 

 

 

 

最後に1つ伝えておきたいことがある。

 

以前の「ブラジャーは突然に」の記事を読んで頂いた方は、

我が家にブラジャーを落とし続けている犯人は、

実は怒り狂った母の仕業なのではないかと疑うかもしれないが、

 

そこはたぶん違うと思うのでご安心頂きたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛しさとせつなさと心強さのカップルの話

 

自己紹介でも述べたが、

私は名古屋育ち名古屋生まれの旦那の影響もあり、

時間が空くと何かと一人で喫茶店で過ごすことが多い。

 

私にとって喫茶店は、

ただコーヒーを飲んだり本を読んだりするだけでの場所ではなく、

どちらかと言えば、ボーッとしたりくつろいで過ごすことが多い。

(平気で2、3時間いるので、店からしたら迷惑な客である)

 

茶店でボーッと過ごしていると、

嫌でも周りの会話が聞こえてくる。

 

子供の反抗期の話…

 (中学生の母親達は大変である…)

近所の高橋さんの悪口…

 (私も町内会の集まりに仮病を使うのはよくないと思う)

ネズミ講の勧誘…

 (大学生の君、引っかかるな!目を輝かせるな!旨い話はねぇんじゃ!)

 

などなど、大変失礼であるが、

隣に座る、見ず知らずの人達の話が気になって

つい聞き込んでしまう時がある。

 

そんな中、先日入った喫茶店で出会った

高校生カップルの会話を紹介したい。

 

その高校生カップルはというと、

 

彼氏は2年生、彼女は1年生で、違う学校に通っているらしい。

彼氏は、ハーフで高身長のイケメン風男子。落ち着いたしっかり系男子。

彼女は、クラスの賑やかなグループにいがちな騒がしい系女子。

また、自分のことを、私バカだし〜と明るく言っちゃう系女子。

 

お互い遠慮なく喋り、

高校生カップルにありがちなイチャイチャした雰囲気でないところを見ると

付き合いも長いのだろう。

 

そんなカップルも最初は仲良く一つのケーキを食べながら、

学校での出来事を楽しく話たり、

カメラのアプリを使って、写真を撮ったりと、

楽しく過ごしていた。

(この頃は、まだ私にロックされていない)

 

すると、ふとした彼女の発言に、(覚えていない…)

 

彼氏「お前バカすぎて人間じゃねーよ笑」

と彼氏が言い放ったのだ。

 

私の耳はピクッと反応し、

瞬時にカップルの会話に耳を傾けた。

 

彼女「じゃあ分かれよ」

 

(お…おもしろそう…)

私は完全にロックした。

 

彼氏「常識の話ししてんだよ。わかんねーわ」

彼女「…」

彼氏「…てかさあ、まず足にそんな落書き書いたりしてる時点でバカ丸出しじゃん」

 

落書き?

私はそっと彼女の足に目をやると、

膝には、サインペンで下手くそな女の子顔が書いてあり、

ふくらはぎには、彼女の名前なのか、

ひらがなでデカデカとフルネームが書かれてあった。

…納得。

 

バカ丸出しの落書きをした彼女を連れ、街を歩く。

彼氏も辛いものがあっただろう。。

 

彼女「可愛いじゃん」

彼氏「可愛くねえよ。だからお前は○谷なんだよ」

 

※ここで補足させて頂く。

愛知県、もしくは東海エリアにお住いの方なら

もしかして…とお気づきかもしれないが、

○谷とは、地元の高校の名前であり、

お世辞にも賢いとは言えない印象の学校だ。

(在校生、卒業生、関係者の皆様、彼と一緒に謝ります…)

 

そして畳み掛ける様に、

彼氏「前から思ってたけど、お前の友達もバカそうで前から苦手なんだよ」

彼女「なんでそんなこと言うのー」

  「ゆみとかバカじゃないしー」

 

そういう問題じゃない。

あんた、友達けなされてるんだよ!怒っていいんだぜ?

 

彼氏「バカだろ笑」

 

ゆみもバカなんかい!

 

彼氏「どーせお前ら、因数分解とかできないんだろ?」

 

言うじゃない彼!

私はコーヒーを吹き出しそうになる。

彼女も、ぐうの音もでない状態。出来んのかい!

(てか因数分解ってなんだっけ?…お前も出来んのかい!)

 

 

彼女「もーさ、単位ギリギリなんだよね笑」

 

気まづくて話し変える彼女、

しかしなぜ自分のバカさを強調する話題にしたのか…

 

彼氏「そんなヤバくてなんで勉強しないんだよ」

ごもっともだ。

 

彼女「やりたくないんだもん」

その気持ちもわかる。

 

彼氏「○谷で、進級できないなんて終わってるってお前」

彼、○谷バカにしずぎな件。

 

彼女「は?もう帰るわ」

 

彼女もとうとう怒る姿を見せた。

よく言った!彼女はバカかもしれないが、

ちょっと彼氏は言いすぎである。彼氏も謝った方がいい。

 

 

しかし彼氏は、

 

彼氏「おう、帰れよ。帰って勉強しろよ。」

 

と、言い放ったのだ。

彼女も「確かに!」と思ったに違いない。

なんて冷静な高校生なのか。私も一本取られた。

 

その後、彼女はぶーぶー言って帰らず、

将来の夢について語り出したのだが、

 

自分はバカだから、普通の会社ではやっていけないから、

キャバ嬢になると豪語していたが、

そんな彼女の夢にすらも、

 

彼氏は「俺よく分かんねーけど、キャバ嬢舐めんなよ」

 

と言い放ち、

「とにかく勉強しろ」とブレない姿を見せた。

(なんて大人な高校生なんだ)

 

 

私は、なぜそんな大人な彼が、この彼女と付き合っているか、

彼女も、なぜ自分のことをバカ呼ばわりする様な彼と付き合ってるのか、

疑問が疑問を呼び、複雑な気持ちになった。

やはり、男女の仲は分からない。

 

そうこうしている内に、

彼らは、彼氏がバイトとのことで店を出ていった。

 

私も、かれこれ3時間その喫茶店にいることに気づき店を出た。

駅に向かって歩いている最中、

あのカップルはこれから上手くやっていけるのだろうか、

いっそのこと別れて、別の人と付き合った方が楽しい生活を送れるのではないか、

などと真剣に他人の恋愛事情を考えたが、

 

遠く前を歩くあのカップルが、

手を繋ぎ、仲良く歩いている姿を見て、

さっきまでの私の複雑な気持ちは、ほっこりした気持ちに変わった。

やはり男女の仲は分からないものである。

 

 

 

ただ、どうか彼女は勉強をしていただきたい。

 

 

 

チッさん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真夏の痴漢〜図書館で出くわした痴漢の話〜

私は29年の人生の中、ちょいちょいセコい痴漢にあってきた。

 

痴漢にセコいも何もないと思うが、

例えば、電車に乗っている時、

座っている私の肩に、

横に立ったおっさんが、電車の揺れを利用して、

リズミカルにモノを当ててくるというような類の

大声で叫んでいいものか否か迷ってしまう様な

セコい痴漢にあってきたのだ。

 

そんな私の痴漢人生(?)のなかで、

非常に印象に残る痴漢経験談を聞いて頂きたい。

 

中学2年生の夏休みの出来事だ。

私の夏休みのルーティンといえば、

午前中は部活、帰宅し昼食を食べ、図書館の自習室で宿題をする

という生活を送っていた。

(一応言っておくが、文武両道の少女だった訳ではない。

やることがない上にあまり友達がいなかったからだ。)

その上、なぜ図書館でわざわざ勉強していたかというのは、

母から家のクーラー代がかかるから図書館へ行け!

との指令が出ていたからと記憶している。

 

そんな生活を送っているある日、

いつも通り図書館の自習室へいき、いつも通り睡魔が襲ってきた。

運動をし、お腹もいっぱい、静かで、涼しい、、

机の上に突っ伏して、私は眠りについた。

 

すると、サンダルを履いていた足の甲に何かが当たる感覚があった。

眠りながら、

「机の足に当たったかな?」と思い足を引っ込め、

また眠りについた。

 

すると、しばらくしてまた足の甲に何かが当たる感覚があった。

眠りながら、

「前の人(対面で座っている人)が、

足を伸ばした瞬間に当たってしまったのかな?」と思い、

そしてまた眠りについた。

 

しかし、これが何回も続くたのだ。

 

普通に考えれば、おかしいと思うべきだったが、

睡魔には勝てぬのだ。

 

そして、また足に何か当たったなと感じた、次の瞬間、

誰かに肩を揺さぶられた。

 

 

見上げると、図書館の職員と思しき女性と警察官が立っていたのだ。

 

 

私は、”自習室での居眠り”で私は警察に捕まるんだ!

と思い「すみません!!」と寝ぼけながら応えた。

 

 

職員の女性は私の謝罪をスルーし、

「大丈夫だった?怖かったでしょ。本当にごめんね。」と言って、

私の肩を抱いて、自習室の外に連れ出した。

 

頭の中はパニックである。

何が起こった?警察おったよな?

怖かった?ごめん?何が?

こちらが寝起きということを考慮して頂きたい。

 

自習室の中を見ると、

警察が対面に座っていた男性と話している。

 

しばらく話した後、

男性はパトカーで連行されていってしまった。

 

 

終始、ポカン。

置いていかれすぎている。

 

 

しばらく私は放置されていた訳なのだが、

連行を見守った職員が戻ってきて、

ようやく何が起こったのか話してくれた。

 

端的に言うと、私は痴漢をされていたらしいのだ。

 

私が感じた、”何かが当たる感覚”というものは、 

対面に座っていた男性が自分の足で、

私の足をちょんちょん触っていたものだったらしい。

 

しかも、わざわざ靴を脱ぎ、靴下を脱ぎ、触っていたと説明を受けた。

 (最初からサンダル履いてこいよな)

 

「はぁそうですか…」と神妙な顔で話しを聞いていたが、

(職員は、私が落ち込んでいる様に見えたと思う)

正直な所、

怖かったとか、気持ち悪いとか、そんな気持ちは一切起きなかった。

(寝てただけですものね)

 

ただ、逮捕に至る経緯(やっぱり男性は逮捕されたらしい)

を聞くと、やり場のない気持ちでいっぱいになった。

 

聞くと頃によると、

犯人の男性は常習犯だったらしく、

自習室を利用する女性達から、多くの被害の声が上がっていたらしい。

職員は警察に相談したものの、

現行犯じゃないと捕まえられないと言われ困り果てていた。

 

そんな時、

 

痴漢をされているにも関わらず

眠り続けているマヌケな女の子が現れた。

 

職員はこれは願ってもいないチャンスだと思い、

警察に通報、現行犯逮捕ということで、無事捕まえることが出来たというのだ。

 

これで、「ごめんね」の意味も納得。

 

何も作戦を聞かされず、

囮になった事に対する怒りが湧かなくもなかったが、

所詮寝てただけでしょ?と

思われている事に対する恥ずかしさの方が勝ったため、

やり場のない気持ちを抱えたまま、結局黙っていた。

 

 

その後、

職員が両親を呼び、私を引き取りに来た。

 

娘が大変な目に合ったにも関わらず、 

勉強もせず寝ていた事実を知った時、

心配もそっちのけで、盛大にど叱られたのは、

痴漢よりもダメージが大きかった。

 

 

 

そんなこんなで、この話は終わっていく訳だが、

 

足をちょんちょん触る様なセコい犯行をし、

マヌケな女によってお縄になるなんて、お気の毒としか言いようがない。

 どうか厚生していてほしいものだ。

 

チッさん

 

 

 

 

 

 

 

 

もう鍵なんて貸さない〜マジックショーに行った叔父の話〜

 

私がまだ小学生の頃の話しである。

 

私には、頑固で嫌味ったらしい性格の叔父がいる。

ある日、そんな叔父が、

某有名マジシャンのショーのチケットが手に入ったと自慢してきた。

 

テレビにも出るような有名マジシャンだった為、

私は「行きたい」とチケットを譲ってもらえないか叔父に頼んだ。

しかし、叔父は「だめ」の一点張り。

「俺の日頃の行いがいいからだよ」と言い残し、

ショーへ出かけていった。

神様の『日頃の行い』のジャッジの甘さを疑いつつも、

どんなマジックを見たのかとても興味があったため、

叔父の帰りを待つことにした。

 

しばらくすると、ショーが終わった叔父が帰宅した。

 

子供ながらに、叔父が凹んだ顔をしている様に見えた。

「どうしたの?楽しかった?」と聞くと、

 

「鍵…曲げられた…」と力なく答えた。

 

叔父の家の鍵を見てみると、曲がっているのである。

家族は腹を抱えて笑った。

 

叔父に事情を聞くと、どうやら、

会場の中でマジシャン本人に抜擢され、ステージにあげられた叔父は、

鍵を貸してくれと言われた。

大抜擢に浮かれている叔父は、言われるがまま自宅の鍵を差し出したらしい。

 

すると、マジシャンは得体も知れないパワーを送り、

鍵を曲げてみせたのだ。

叔父は唖然。

会場は、大歓声に包まれた。

マジシャンは得意げに、曲がった鍵を観客に見せて回った後、

「お戻りください」という言葉と共に、鍵を叔父へ返却。

 

叔父は何も言えず、曲げられた鍵を手に、素直に席へ戻った。

席へ戻った叔父は、スターのごとく周りの観客からもてはやされつつも

鍵を曲げられた現実を受け入れ始め、

「元通りにしてくれなきゃ困る」と思ったらしい。遅い。

 

しかし、ステージでは別の演目が始まっており、

「直してください!」などど、割って入る訳にはいかない。

仕方なく、終了するまで待った叔父であったが、

終演後、マジシャンに会える筈もなく、スタッフにお願いしても、

変質者ばりの扱いを受けるだけだった。

そして、成すすべのなくなった叔父は、トボトボと帰宅してきたのだった。

鍵は曲げられるは、家族に散々笑われバカにされるは、

災難な叔父である。

 

当時の私は、あんなに楽しみにして観にいたのに、

かわいそうだなと思ったが、

神様の『日頃の行い』のジャッジはやはり甘くはないのだと

子供ながらに学ぶものがあったと記憶している。

 

鍵の行方だが、

力ずくで直すこともできたらしいが、

記念として今も曲がったまま保管しているらしい。

 

そして、叔父の性格は変わらない。

が、私は大好きだ。

 

 

チッさん

 

 

 

 

ブラジャーは突然に〜その後〜

 

なんとその後も、

7年間、1年に1.2回ペースでブラジャーが我が家に落とされ続けているのである。

 

隣の家でも前の家でも後ろの家でもない。

毎回我が家の駐車場の同じ場所なのである。

コリもしない犯人である。

 

最初の方は、また警察を呼んだり相談に行ったり、

我が家は不安と恐怖に襲われていた。

ただ、風で飛ばされてきたであろう、使用済みのティッシュにさえ

ビクビクしていたくらいである。

 

しかし警察は毎度「パトロールを強化します」を超える事なく、

一瞬強化し、いつの間にか強化期間も終了し、またブラジャーを置いていかれる。

というスパイラルを今日まで続けている。

いつか犯行がエスカレートして、犯罪にあったら警察に文句言ってやる

と意気込んでいた時代もあったが、

犯人は律儀に7年もの間、エスカレートする事なく、

警察にも家族にも見つかることもなく、

飽きることなくせっせと同じ家に同じ犯行を続けているだ。

捕まえるとか置いといて、ぜひどんな奴なのか会ってみたいとさえ思う。

 

しかし犯人は変わらない様子だが、私の家族は変わった。

動じなくなった。

当初はセンサーのライトを設置したり、家の周辺を見回ったり、

さらには防犯カメラを設置して犯人を特定しようともした。

母に至っては、「犯人を特定した!」と、

証拠もないのに近所の若者を勝手に犯人とみなし、

動向を見張っていた時期もあった。

しかし今では、冷静に反応し、対応している。慣れとは怖い。

 

これからも続けていくのは構わない、しかし、

いつも疑問に残るのがブラジャーの持ち主についてだ。

毎回サイズも色も柄もコンセプトも違う使用済のブラジャー。

どこかから盗んでいること以外に想像ができないのだが、

だとしたらどこかの誰かが困っているに違いない。

警察によると、拾ったブラジャーと盗まれたと届けがあったブラジャーで、

一致するものはないらしい。

わざわざ届けを出している人が少ないのが現状らしい。

ただ、持ち主が現れず、

母にも引き取りを拒否された過去のブラジャー達は、

今頃どうなってるのかとふと思う瞬間もあるのである。

 

戦いとも言えないの事件は、いつまで続くのか…

また進展があったら書こうと思う。

 

チッさん

ブラジャーは突然に〜通報編〜

 

 

そんなこんなしていると、父が帰ってきた。

ブラジャーを見つめ、眉間にシワを寄せている父は、何ともシュールである。

 

そして、新聞紙に包まれたブラジャーを囲んでの家族会議

 

とにかく今日のところは、

各々一旦ブラジャーから離れ寝ようということになり、

不思議な気持ちを抱いたまま床についた。

翌日も、両親は仕事、わたしは大学へ行かなければならなかったので、

ブラジャーのことはあえて話題に出さず、それぞれ家を出た。

 

学校が終わり、昨日と同様、

仕事終わりの母に車で拾ってもらい帰路についた。

あ〜昨日のブラジャーどうするんだろ…?

なんて考えているうちに車を駐車場に止める瞬間、

昨日と同じ場所にまたホワッとしたものがあったのである。

 

…ブラジャーだ。。。

 

とっさに車から降り、母と確認する。

ヒョウ柄…」母の呟きに吹きそうになったが、

2日連続ブラジャーがそこにあるなんて、

人の手によるものであり、どなたかの犯行を疑わざるを得ない。

 

すぐに父に連絡をしたところ、「とにかく現場を保存し、警察に通報して」と、

どこぞのドラマでよく聞くようなセリフを言ったので

(一般人の現場保存の指示の違和感…)、母は110番通報をした。

 

警察に通報するなんて無縁の人生だと思っていたわたしは、

ドキドキしながら警察の到着を母と待った。

数分後、パトカーが到着した。

犯罪とは無縁の住宅街に住むご近所さんも何事か?

と心配そうにこちらを伺っている。

 

母は、新聞紙に包まれた昨日のブラジャーと、

現場保存した今日のヒョウ柄を警察に見せ、

発見した経緯などを警察に伝えた。

 

警察は、「ここは夜人通りが少ないし、

故意に置かれた可能性が高いね」と推理して見せ、

「誰か嫌がらせ受ける覚えある?」などと、

怨恨の線説を持ち出してきた。

母は「そんなのないと思いますがね…」と即座に否定していたが、

両親とも公務員で娘は真面目な女子大生の平凡真面目な一家である。

恨まれるような事柄とは無縁な一家代表である。

 

とりあえず、

トロールを強化するしかできることはないとの事だったので、

不安は残ったままだったがお願いすることにした。

(警察によると、この場合はモノが落ちていたに過ぎないため、

被害届などは出せないらしい。)

 

警察が帰る雰囲気を出した時、

わたしは大事なことを忘れている気がした。

…落ちていたブラジャーそのものの存在だ!

「すみません!!このブラジャー達はどうすればいいんですか?」

「そうでしたね笑」笑←じゃない。

「この場合、落し物拾いましたって届けを出してもらいます」

落とし物?拾いました?

『「すみません、、公園に財布が落ちてたんですけど、、」

 「では、落とし物拾いましたって届け作成しますね」』

と一緒ですか?!と聞きそうになったが、

そうというのであれば、そうらしいのである。

 

いつ、どこで、なにが、どのような状態で…

などと事細かに聴取された

(ブラジャーの色やサイズ、特徴も記載しなければならないらしい

…ご苦労様な仕事だ)。

そして最後に、

「持ち主が見つからなかった場合、拾われた方がそのモノを取得する権利が与えられますが、いかがなさいますか」と質問された。

冗談だろと笑いそうになりながら、

母を見ると「…いりません」と返していた。

ちょと考えた??と疑ったが、

後から聞くと、予想を超えた質問だったので、

固まってしまったとの事で、安心した。

翌日から、警察のパトロールも強化されブラジャーが落ちている事はなくなった。

 

続く

 

チッさん

 

ブラジャーは突然に〜発見編〜

時は2020年、我々家族はかれこれ7年間戦っている質者がいる。

7年前の2013年と言えば、

今年開催される東京オリンピックが東京に決まった記念すべき年、

お・も・て・な・し

などとプレゼンをこいていた滝クリ

7年たった今では、進次郎の妻となり一児の母にまでなっているのである。

時の流れは早い・・・

 

そんなことはさておき、

「変質者」と我々家族との戦いは、2013年の夏に始まる。

夜、外出先から車で帰ってきたわたしと母は、

いつも通り敷地内の駐車場に車を止め、車から出た。

 

すると、車の横に白い物体がホワッと転がっているのが見えた。

わたしは「ん?」と思い近寄ると、

 

なんとそれはブラジャーだった

しかも新品ではなく、明らかに使用感のある使い古したものであった。

 

一瞬固まるという体験はそれが初めてだったと思う。

(二度目は、あほ面で寝ている旦那がうっかり、

浮気を決定づけるメールを開いたままにしてあるのを

目撃した時だと思う。)

すぐに母を呼ぶと、母もそれを見て一瞬固まっていたが、

恐らく、白い何かがあるな→布?→刺繍?→ホック?→ブラジャー!

と言った流れでブラジャーにたどり着いたようで、

「何これ!!??」と改めて驚く姿を見せた。

 

ブラジャーと認識した後、わたしの頭によぎったのは、

まず、なんでこんな所に??ということと、

誰の?まさかわたしの??という不安だった。

落ちていたのは自宅の敷地内だし、

我が家はパンツでもブラジャーでもなりふり構わず

洗濯物は外に干すタイプの家だったため、

ここまで飛ばされたのか、

うっかり鞄に入れたブラジャーが落ちたのか、、、(うっかりって何だよ)

などを瞬時に疑った。

しかしよく見ると、わたしのではない。

母も同じ思考に至っていたのか、

「お母さんのじゃない…」と呟いていた。

 

そうなると、なぜ他人のブラジャーが我が家の敷地内にあるのか!である。

クタッと横たわるブラジャーを横目に、

とりあえず、母と私は『どこかの家の洗濯物が飛ばされてきた』とうい説で納得し、

今日のところは保護して

(母が新聞紙で包んでいた←何でも新聞紙で包むのお母さんあるあるだと思っている)、

父の帰りを待った。

 

続く

 

チッさん